2024年8月24日

DRSSTC (S-P WPT) の回路シミュレーションと解析

 はじめに

Tesla Coilは得体のしれない装置というイメージが多いと思いますが、実は回路シミュレーションしたり、理論解析したりすることができます。放電を除けばただの線形回路素子の集まりであり、ただのトランスにすぎません。

Tesla Coilはいくつかの方式がありますが、中でも大きな放電を発生させるものにDRSSTC(Dual Resonant Solid State Tesla coil, 二重共振テスラコイル)があります。本記事ではそれを回路シミュレーションし、既存の理論も踏まえてその特性を考察することを目的とします。

先に結論を書いておきます:
  • 電圧ゲインや電力効率は負荷抵抗値に大きく依存する。
  • 軽負荷において、共振周波数は3つ存在する。そのうち動作できる周波数は2つであり、値は負荷に依存する。
  • 結合係数が大きいと電力効率が高い。
  • 特定の負荷抵抗値において最も具合のいい結合係数が存在する
他にも、DRSSTCの基礎や定数の計算なども参考になれば幸いです。また少しトリッキーなLTspiceの回路もあるので、中~上級者の回路設計者も喜んでいただけるかと思います。

基礎・理論

Tesla Coilは巻き数比が数百の非常に高昇圧のトランスです。ただし1次2次間の結合が小さいためにそのままでは使い物になりません。しかし、2次コイルの共振周波数で駆動することで、よく見るようなパワフルな電力伝送が可能であることが知られています。つまり、2次コイルの共振を表現することは必須であるといえます。コイルの寄生容量が並列に存在していると近似すると、DRSSTCの等価回路は下図のように書けるはずです。
図のように共振回路が二つ形成されているため、Dual Resonantの名がつけられました。これでも回路シミュレーションできますが、キャパシタなどの定数の計算法がわかりませんので、さらにトランスの部分を等価変換してみます。トランスを漏れインダクタンスと励磁インダクタンス、さらに変圧の役割で分割すると、上図は下図のようにも書くことができます。


ここで放電はあまりに複雑なので、ここでは近似的に抵抗としています。また、中央の抵抗みたいなものは理想変圧器です。これは結合係数k=1かつ自己インダクタンスが無限大のトランスで、変圧もしくはインピーダンス変換のみを行うことになります。

共振周波数において、直列LC共振回路はショート、並列LC共振回路はオープンとなります。この等価回路を見ると、うまく定数を選択すれば、回路全体で理想変圧器となることに気づくでしょう。つまり共振条件は、
普通、まずは周波数を設定することが多いですし、さらにコイルのパラメータはおそらく決まっているので、上式をCp, Csについて解いた式が便利でしょう。

また上式が成り立つとき、共振周波数において入力インピーダンスは抵抗性となります。これはZCS (Zero Current Switching, ゼロ電流スイッチング) が可能でということで、スイッチング素子がON, OFFする瞬間の電流が小さくなることで低損失となります。

ところで電圧ゲインは単純に理想変圧器の変圧比なので、
これだけ見ると結合係数kは小さい方が良いように思えます。しかし実際は損失の成分があるため、結合係数が極端に小さいと電力効率は低くなり、同時に電圧ゲインも小さくなります。それも次節で検証してみます。

シミュレーション

とりあえず適当なパラメータでSPICEシミュレーションしてみます。LTspiceのスクショを以下に示します。(ミスでRlsとRlpが逆です)


今回、負荷依存性を見るために負荷Rsを10k, 153.9k, 1Meg Ωでstepさせています。また、共振回路は定常値を見たほうが解析的なのでAC解析としています。DRSSTCは過渡的な特性も重要かもしれませんが、強制振動なので定常的な解析でもいいでしょう。ちなみに二重共振系の過渡解析はあまりに複雑なのでやめておいた方が無難です (SGTCは必須なので難解)。

シミュレーション結果はこうなりました。まず入力インピーダンス(V(in1)/I(R2))を見てみます。

図を見ると、すべての負荷抵抗値において、自分で設定した共振周波数fr=500kHzで位相が0度になっていることがわかります。これは前章で導いたように理想変圧器となっている証拠の一つです。さらにインピーダンスの大きさも負荷抵抗に比例しているように見えるので、理想変圧器の特性が得られています。ほかに特筆すべき点は、
  • Rs=1MΩにおいて、共振点 (位相が0になる点) が3つに増えている
  • Rs=153.9 kΩは共振点が増えようとするぎりぎりの値に見える(これを超えると3つに増えそう, 下回れば1つ)
つまり、ある負荷抵抗値を境に共振周波数が減ったり増えたりしそうということが予想できます。

実はこの現象は磁界結合の非接触給電においてよく知られています。僕の調べでは、2010年ごろには「別の特性になる周波数があって使えそう」という雰囲気の研究がされていました。そして2020年には完全な理論が発表されました。

米田 昇平, 木船 弘康, 共振コンデンサを直列または並列に接続した電圧源駆動非接触給電回路の共振周波数と負荷電圧, 電気学会論文誌D(産業応用部門誌), 2020, 140 巻, 9 号, p. 642-650

上記文献はS-P, P-S, S-S, P-Pの全方式の特性を網羅的に解析したもので非常に有用です。しかしまだ有料なので、代わりに以下の文献を読んでもいいと思います(たぶんオープンアクセス)。

米田昇平・木船弘康, 「共振周波数追従制御を適用した水中探査機向け非接触給電システムの負荷電圧特性の検討」, 2018

ということで、この既存の理論を以下で扱います。

新たな共振点における特性

新たな共振点ではどのような特性になるのでしょうか?実は今回の回路(S-P方式)の場合、定電流特性になることが知られています。自分で設定した共振点frでは理想変圧器となったことを考えると、対照的で美しいですね。負荷依存性を書くと以下のようになります。

ここで新たな共振周波数をfr high, fr lowとしています。図のように、新たな共振点では電圧ゲインは負荷抵抗値に対して比例します。入力インピーダンスが抵抗性であることを考えると、電源が電圧源ならばIout=Rs/Vout, G=Vout/Vin ∝ Rs よりIout=const.であることがわかります。これはつまり出力が電流源となっているということです。

ところで、実際のDRSSTCはどの周波数で動作しているのでしょうか?それを考えるには周波数制御を定義する必要があります。ふつう、一次コイルの電流位相をインバータにフィードバックするので、最も単純化すると以下のようになります。

こうすることでインバータの電圧と電流位相が一致し、ZCSが達成されます。単にオープンループゲインが極端に大きな発振回路とも言えます。これはもちろん入力インピーダンスの位相が0degとなる周波数で動作しますが、上図の下のようにそれが3つある場合はどうなるでしょうか。この回路は位相がプラスのときは周波数を下げ、マイナスのときは周波数を上げる動作をします。このように考えると、図のように両端の共振点にしか追従できないことがわかるかと思います。これより、動作周波数は以下のように書くことができます。
つまり、Rsが小さな抵抗値であれば電圧源特性、大きければ電流源特性となるということです。

実際にシミュレーションしてみましょう。例えば以下のような回路を組めば発振してくれます。
先ほどとは違い、時間領域(.tran 0 100u 0 100n)で動かします。例えばRs=100kΩにおける波形はこんな感じです。
狙い通り、入力電圧と電流の位相が一致しています。これを負荷を変えながら値を取っていけば負荷特性がわかるはずです。今回は出力電圧のピークを取ってみました。基本波近似すると入力電圧のピークは100Vなので、読んだ値を100で割れば電圧ゲインが求まります。

結果を以下に示します。(関係ないですが、このようなグラフを作るにはExcelよりScilabの方が楽です。さらにpythonよりコーディングが雑でいいから早い!)

記号が読み取り値、線は理論値です。予想通り、Rs spを境に特性が切り替わっています。

周波数もとってみました。しかし単一スペクトルではなく、周期が刻々と変化している可能性が高いので、波形から読むことはできません。そこでLTspiceでFFTし、スペクトルのピークを読みました。対象は入力電圧(V(in1))です。結果を以下に示します。
記号が読み取り値、線は理論値です。理論値は前述の文献の式を用いています。シミュレーションと理論は少々の乖離がみられますが、周波数はかなりセンシティブなので仕方ないと思いたいです。図から、Rs>Rs spでは低い共振周波数に追従していることがわかります。fr highかfr lowのどちらに追従するかは、オープンループゲインのf特や、回路定数の変動により変えることができます。しかし実のところどちらも似たような特性なので、低周波のTesla Coilにとってはどちらでもいいでしょう。

とにかく、電圧ゲイン・周波数のどちらにおいても、理論がおよそ使い物になることが示せたかと思います。

損失があるときの特性

これまで無損失を仮定していましたが、そのせいで負荷がオープンであるときの電圧ゲインは無限大になってしまいます。実際には損失は無視できない値であるはずで、電圧ゲインはある値に収束するはずです。

有損失におけるシミュレーションは同様にLTspiceでもできますが、いちいちデータを取るのが面倒なので、ここでは数値シミュレーションをしてみます。今回の回路はいくつかの素子の縦続接続で表現されているので、Fパラメータ (ABCD matrixともいう) を使うのが便利です。参考に記事の最後にpythonスクリプトを貼っておきます。

今回、結合係数 k が大きいときと小さいときで電圧ゲインと電力効率がどのように変化するかを見てみます。結果(Rlp=0.2 Ω, Rls=10 Ω):
無損失においては電圧ゲインはkに反比例するため、kは小さい方がいいのではないかと思えました。しかし有損失では、kが極端に違うにも関わらず、電圧ゲインはほぼ同じであることがわかります。それどころか、負荷抵抗値が小さい範囲ではkが大きい方が電圧ゲインが大きいことが見て取れます。

次に電力効率を見てみます。kが極端に小さいと、広い負荷抵抗値の範囲で電力効率が小さいことがわかります。電圧ゲインがほぼ同じことを考えると、これはインバータに流れる電流が大きくなるということであり、つまりスイッチング素子の定格が同じであれば、入力電圧を上げられなくなることにつながります。結果、電圧ゲインが近しいにもかかわらず、kが小さいと出力電圧が小さくなることになります。

これより、kが極端に小さければ具合が悪いことがわかりました。しかし逆にkが大きすぎるとどうなるでしょうか?シミュレーションしてみましょう。
図をみると、どちらも電力効率が高いため無損失と近しい特性となっています。特に負荷抵抗値が小さいときに電圧ゲインの差が大きく、結合係数が小さい方が電圧ゲインが大きくなっています。つまり、kがある程度大きければ、kは小さい方が良いということになります。

以上を踏まえると、結合係数は小さすぎても大きすぎてもよろしくないといえます。つまりこれは、特定のインバータで最適値が存在するということを示唆しています。(とはいえ実際は幾何学的に最大値が決まってしまうので、その最適値は0.2とかよく使われる値になりそう)

結論

繰り返しになりますが、これで以下の知見が得られました。
  • 電圧ゲインや電力効率は負荷抵抗値に大きく依存する。
  • 軽負荷において、共振周波数は3つ存在する。そのうち動作できる周波数は2つであり、値は負荷に依存する。
  • 結合係数が大きいと電力効率が高い。
  • 特定の負荷抵抗値において最も具合のいい結合係数が存在する
これらを理論的に導出できたので今回はよしとします。最適化についてさらっと触れましたが、まだまだ多くの課題があり、研究のしがいがありそうですね。誰か真面目に研究してみてください。

ここまで読んでいただきありがとうございました!

補足

pythonスクリプトはGitHubにあげておきます。
->(数日後まで待って)

また、本記事の内容は既存の研究をもとにしたものであり、それ自体に新規性が無いように意識しました。これはまだ僕が学術の世界に身を置いているからです。これから発表予定の内容を記事にするなんて言語両断ですからね(笑)。しかしWPTとDRSSTCを理論的に結びつけた文献は他にありませんし、考察に関しては新しいので論文にしようと思えばできるとは思います。もし興味を持っていただけたなら、本記事を踏み台としてさらに進んだ研究をしていただけると幸いです。僕も学術論文の苦労を知っているので、本記事と似たような研究になっていても全く問題ありません。学術の世界に仕事を残すこと自体が、長い目で見ると重要ですから。

長いことTwitter(X?)から離れている件(身の上話)

おそらくTwitterがTwitterだったとき、2年前ぐらいにTwitterからいきなり離れましたが、一応理由があります。
  1. 学部4年になって研究室でものづくりをするようになり、発信したいのに発信できないことが多かった。もどかしい。
  2. 離れてたら精神的に健康的だった
やはりすごい人の進捗を眺めるのは精神衛生上好ましくありません。性格上、どうしても焦燥感が生まれてしまいます。その焦燥感が自分を育ててきたのかもしれませんが、それは結果論であり、当時必要なものだったかどうかは別の話です。まあTwitterはすごい人がフィルタリングされて生き残っているので、すごすぎるのは仕方のない話ではあります...

もうすぐ修士を卒業となります。企業でどのような働きをするかはわかりませんが、今の研究生活のような好き勝手なものづくりは無理でしょう。おそらくなにかしらを家で始めるはずです。そうなったらTwitterかはわかりませんが、なにかしらの形でネット上に現れるかもしれません。その時はよろしくお願いいたします。

2019年12月3日

386オーディオミキサー

近況報告 

お久しぶりです。ネトラトだよ~
 最近は無線送電の解析の成否を確認するために試験回路を設計しています。この前のヒステリシス変調を使ったテスラコイルの回路がほぼそのまま使えるので楽ですが、電流検出を共振コンから取ってるので少し工夫しないとですね。

目標

 今回紹介するのは、簡易的なオーディオミキサーです。スマホでDiscordを繋ぎながらiPadでゲームできたら便利だなと思って作ってみました(買いましょう)。Discord動かしながらゲームしたら重くなりそうで嫌だなというわがままから生まれました。
 つまり、求める仕様はこんなんです↓
  • 負荷はイヤホン
  • 2入力を加算
  • Gain=1
ちなみに今回苦労したのはゲインを下げる事でした。もしこの世に雑音が無ければ入力レベルを下げるだけでいいのになー(現実はゲイン分、ノイズが増幅される)

回路

珍しくBSchで書きました!新しい文明への一歩です。



 電源はmicroUSBからの5vとし、秋月電子のDIP化キットでユニ基に刺しました。アンプicは外部からNFBを掛けれるLM386にしました。
 反転入力に出力の一部を帰還して、ゲインを固定ゲインより下げました。OPアンプのゲイン低いverみたいな感じです。後で知ったのですが、これはよく聞く「非革命アンプ」らしいです。みんな考えることは同じなんですね。

  • 発振対策C

 実は作る前は入れてなかった部品がありました。それがC3,C4です。無い状態の症状は、入力のイヤホンジャックをスマホに刺した時から出力に大きなホワイトノイズが載り続けるというものです。明らかな異常発振ですね(こういう目に見えたエラーってワクワクしません?僕はそう思いませんけど。)。そこで、発振対策としてC3,C4を入れてみました。結果は抜群で、その現象は無くなりました。
 しかし、この場所にCを入れる位相補償ってどんな原理なんですかね。高周波でのゲインが上がりますよね...ちなみにR9,R11に並列にCを入れたら逆に不安定になりました。ちょっと今の僕には分からないので匙を投げます(動いたし)。
 帰還回路とCによって周波数特性が変わるはずですが、カットオフ周波数が約30kHzなので入力のLPFより影響は小さいです。

  • LPF

 R5~R8とC1,C2でLPFを組んでいます。カットオフ周波数が6kHzで可聴域なので時定数が大きすぎですね。
 このLPFはスマホからのノイズをカットするという目的があります。なので、カットオフ周波数を上げすぎるとサーって音が聞こえてきます。イヤホン直挿しでは聴こえないので、聞こえない帯域のノイズを増幅するときに可聴域になったと思われます。厳密なことは分かりませんが、もしそうなら入力でカットすればいいはずです。ちなみに、このノイズはスマホならありましたが、iPod shuffleだと無かったです。
 今回はノイズが気になるのは嫌だったので時定数を大きくしましたが、最適とは言えないでしょう。

  • 電源ノイズ

 micro USBから電源を取っているので、スイッチングノイズが載る場合があります(アダプターにもよる)。スマホの充電時よりかなり小さな消費電流なので、無負荷時の間欠動作になり可聴域のノイズが載ります。そこで、消費電力が小さいときしか使えませんが、電源にRCフィルターを入れました(R17,C11)。しかし、一部のACアダプターではノイズが消えなかったので定数は微妙かもです。
 ちなみに、C5,C6はic内部の小信号増幅段の電源ノイズを抑制します。

  • 短絡保護(課題)

 短絡保護はガバガバで、R15,R16でリミットを掛けてます。スマホだとアナログスイッチで出力を完全に切り離してて偉いですよね。つまり実用化するなら保護回路を組むべきです。

作る

 Cタイプの基板に納まりました。8pinのicソケットが無かったので16pinので作れるように設計しました。本来はGain(1,8)ピンと出力ピンが隣接するのは良くないですが作ってみたらそんな影響はなさそうでした(結果論)
   注)上図にはC3,C4がありません。あくまでも参考程度にお願いします。
僕もCAD使えるようにならないとですね...最近Eagleで遊んでますがまだまだ遠そうです。
出力のDCカットコンが対称でないのは幻覚です。

動作報告

音質など

 音質は悪くは無いと思います(よくわからない)。多分、オーオタの方からするとゴミだと思いますが、今回は音楽を聴くことはないので十分そうです。ホワイトノイズはほぼ聴こえませんでした。
 あと、入力に何も繋いでない時の60Hzの音は十分抑えられてました。ただ、R4~R4を5kR以上にしたらダメそうでした。本来は低抵抗のスピーカーが繋がれる場所なので、1kでいいと思います。
 数回使ってますが、僕の用途では満足です。

蛇足

 最近進捗がまちまちでTwitterに書くことないんですよね~この記事投稿したら再開するのでもうすぐ帰ると思います。
 またの~

2019年5月18日

汎用ロジックでD級アンプ

(追記:ΔΣ型となっていますが、本当はヒステリシス変調という方式らしいです。2つの違いを調べてもよく分からなかったので詳しくは書けません)

自己紹介


 こんにちは!ネトラトだよ~! なんとHITEGに入ってみました。メインブログとは分けて小ネタみたいな記事を書こうと思います。いわば気分転換の工作ですね
 これからもよろしくお願いします。

動機


 突然ですが、私が気分転換の時は簡易D級アンプを組みます。理由は原理が面白いのが大きいです。個人的に好きな方式がΔΣ方式なのでいつもそれにしています。
 普通、ΔΣ型のパワーアンプはその原理からコンパレーターが必要です。入力と出力の大小関係をフィードバックするためです。今までもLM393等を使って遊びました。


 しかし、それを一見無くしたかのような回路を思い付いたので実際に作ってみました(遊び)

基本原理


 まず、ΔΣ型は普通のアンプと同じように、出力電圧と入力電圧が同じになるように動きます。つまり負帰還をかけるのですが、パワーアンプが1か0しか出力できないので、その方法が特殊になります。↓
 もちろん負荷に1or0の出力を付けるとアナログの値はありませんから、Lを介して繋ぎます。Lは電流がゆっくり上がっていきますから、オンオフを繰り返せばアナログの値がでるはずです。この状態で負荷の電圧を監視し、入力よりも高いか低いかでパワーアンプ出力の値を変えます(1or0)。このままだとただのアナログアンプになるので正帰還を掛けます。つまりヒステリシス特性を持たせ、目標の値はふらふらします。↓ヒステリシスが掛かった鋸波


回路


 今回、コンパレーターを汎用ロジックで代用したいのですが、例えば74hc04の閾値は約2.1vに固定されているので苦しいです。
 そこで、icの閾値を変えるのではなく、フィードバック電圧(FB)を変えるという手法をとります。具体的な基本回路は以下の通りです。

FB入力の平均電位を抵抗で変えます。各コンデンサーはカップリング用です。入力は電流がほとんど流れないので小容量でいいです
 実験回路は以下の通りです。

電源はmicro USB(5v)で、ケーブルの長さが影響しそうなので100uFの電解コンを電源ラインに入れました。スマホ用のアダプターは低負荷時の動作が物によって違うので電源フィルターの確定は難しそうでした。
 470uHという値はおよそで決めました。周波数的な話で、あまり高すぎると遅延時間が顕著に出て、再現性が悪くなります。具体的には三角波状のリップル電圧が数倍になり、動作がリング発振器(遅延を利用した発振回路)になってしまいます。
 74hc04の閾値はVcc=5v時約2.1vで電源電圧の1/2よりも低いので、なにもしなければDuty比は50%ではありません。これは回路が入力をVthに保とうと働くことに由来しています。
そこで、FB電圧を変えるように入力にDC電圧を上乗せします。ここでは入力を51kでプルダウンし、Duty比を上げています(値は実験で決めました)。
 470uHの先に10nFの積セラがありますが、これはスピーカー(SP)接続時は意味がありません。しかし、SPが無くなったときにこれが無いとインダクタに電流が流れず、発振周波数が跳ね上がります。発熱が心配だったので入れておきました。
 最後に、基本なのですが入力の最初にフィルターを入れるといいです。スマホを繋ぐと分かるのですが、酷いノイズになって増幅されます。かなり高い周波数が含まれていて、それがノイズに変化したのだと思われます。

製作・結果


ブレボに組みました。


 発振周波数は約78kHzでした。正帰還の抵抗を小さくするとヒステリシスが強くなり、周波数は下がってリップルは大きくなります。
 MOSFETのプッシュプルは出力のリンギングが酷いイメージでしたが、今回のはほぼ無かったです。ゲート駆動素子が貧弱なのが理由でしょう。やはり低速な回路は楽ですね。
(ゲート波形)↓

 下にFB端子の電圧波形を示します(ロジック入力)

Vthを越え、出力が切り替わった直後に電圧が加減されているのが見えます。これが出力にリップルとして現れますが、周波数が高いのでSPのL成分で影響が無くなります。
 で、肝心の音ですが、私には優劣が分かりませんでした。明らかな劣化は感じられず、ノイズもほぼ聴こえませんでした。簡単な回路な事もあって割と嬉しかったです。

考察・課題


 今の回路ではLRの分を作ると2つの論理ゲートが余りますが、これが丁度良くてバイポーラ駆動に出来ます。もう1つプッシュプルを追加して、その駆動に余ってるのを使います。利点は知りませんが(本末転倒)
 ただ、1つ大きな欠点があって、ゲインが小さいことです。ゲインは負帰還抵抗と入力抵抗で変えれるのですが、上げようとすると結果的にFB電圧も下がってしまい、発振が止まってしまいます(アナログ動作)。なので、これ以上のゲインを求めるならロジックを多く繋ぐと良いのですが、1チップの利点が無くなります。それくらいならオペアンプを入力段に入れるのが現実的と思います。面倒なのでしませんが

おわり


 FETとhc04だけで組めるのでかなり楽でした。その割に波形が面白いので嬉しさも大きいです。みなさんも気晴らしに組んでみてはいかがでしょうか。
 もう1つ、私はまだ過渡応答の計算を知らないので発振周波数の式が分かりません。発振余裕度等、その辺をしっかりすると実用的になる気がするので誰か最適化してください(投げ

ここまで読んでくれてありがとう!またノ~

2019年5月3日

電子レンジを分解

 こんにちは~ぜろちゃんです。
さて、突然ですが知り合いから壊れた電子レンジをもらったので分解して部品取りをしました。

 では、写真投下していきまつ。
分解したのはこれ。HITACHIの97年製。
電子レンジお約束の回路図と、「サービスマン以外は(略)」の警告。
見た感じMOT式。別にガッカリでもうれしくもないw

あ、このブログを見に来ているような人たちは大丈夫だと思いますが念のため、
このブログを参考にして起こった事故等についっては一切責任を負いかねます。

まぁ、オイルコンデンサには並列に放電用の抵抗が入ってるし、電源つけたまま分解したりしない限りはある程度大丈夫だけどね。

蓋を開けました。部品の配置はどれもほとんど同じです。つよい...
マグネトロン、MOT、ファンなどを外しました。
右下にあるのがオイルコンデンサで、その上にある黒いのが50Hz/60Hzの切り替えスイッチです。
取り出したオイルコンデンサを観察。右にあるのは以前に別の電子レンジから取り出したもの。大きさ比較用。
3極で50Hzと60Hzの両方に対応している。

続いてはMOT。AC100Vを2000Vまで昇圧します。
手前にみょーんって出てるのは高圧の線ではなく、マグネトロンのヒーター用の線。
 ヒーター用の線は最大値を測ってみたら6Vくらいだった。
スズメッキ線でショートさせたら赤熱して焼き切れた。
電流はそこそこ流せるっぽい。
最後に、今回取り出した部品たち。使う機会なかなか無いけどそのうち使うでしょう(こなみ

 感想としては、ねじの数も多くなく、比較的分解しやすかったかな。

ではまた~

2019年4月20日

FBTプラズマスピーカー

こんにちは。ぜろちゃんです。
ちょこちょこ作ってたFBTスピーカーが完成したので画像貼ります。

回路はwataさんのを使わせてもらいました。原理は調べたら出てくるので割愛します。

適当に画像垂れ流していきますよw

製作途中です。この時は24V→12Vにする電源基板をステレオの両チャンネルで共有していましたが、ステレオにするとノイズがひどいのでこの後電源を分離しました。(ノイズはほとんど改善されませんでしたがw)
 ちなみに使ってるFETは、最初は2SK1122を使っていましたが、いろいろ実験してると壊れたので15Aのものに交換しました。
電源トランスはジャンクのコンポから取り出しました。
 ノイズ問題を解決すべく、銅とアルミを重ねてシールドのようなものを作りました。
FBTと制御・電源基板の間に立ててみましたがあまり効果はありませんでした。。。
フロントパネルを作りました。周波数、duty比を調節するVRと、それぞれの電源スイッチ、オーディオ端子が付いてます。
適当設計&配置なのでスイッチの高さとか微妙にずれてます。かっこ悪いですw
パネルは塩ビで作りました。アクリルでも良かったんですが塩ビのほうが加工が楽そうなので(小並感)
色々途中の工程すっ飛ばしましたが完成です。電源基板には青色LEDを付けました。
天板は板の余りがなくてそこら辺にあったのを使ったので穴が開いてます。
電極は良いのが見つからなくて今は適当に銅線使ってます。そのうちちゃんと作ります。
暗くするときれいねー。
裏はこんなん。ちゃんとフィルタも入ってます。

はい。作ったFBTプラズマスピーカーの紹介でした。
肝心の放電してる動画ですが、私のTwitterにて公開しています。
https://twitter.com/zvsmake/status/1112677938153943042

以上。ではまた✋
(HITEGの人たちブログ更新して)

2018年9月16日

高出力ZVSのお話【後編】

 こんにちは。ぜろちゃんです。
 久々にブログ更新しましたね。小ネタは色々あったんですけど、めんどくさくて放置してました。てか、メンバーの皆も書いてくれよなぁ、頼むよ~

さて、前回の「高出力ZVSのお話【全編】」を書いてからかなり間が空きましたが、久々に某ZVSドライバーを作ったのでブログを書こうかと思いました。

今回は基板にまとめました。回路はよく出回ってるやつ+αです。とはいっても普通の回路とそんなに変わらないです。ちなみに共振コンデンサは分けてます。
FETは2SK3711です。秋月にもあるし、そんなに高くないからおススメ...
最初はこうやって誘導加熱をやってたんですが、24V入力すると600Wくらい食って共振コンとコイルの発熱がヤバかったので、水冷にしました。共振コンの半田が溶けたしね。

ただ乗っけてるだけで固定はしてないです。これは水を抜いた時の状態。
それと電流計も買いました。50Aのものです。電源が52Aまでなのでちょうどいいですね。シャント抵抗は自作ですが、結構正確なのでokです。

 残念ながら、加熱してる時の写真は撮り忘れました。動画は撮ったけどね。
L字板を入れたら入力の電流が25Aくらい流れました。電源が鯖電源×2で24Vなので600Wくらいです。

大きめの過熱対象を入れたら45Aくらい流れました。1kW超えです。ただ、ここまでくると秋月の9Aのトロイダルコイルでは熱々になるので、本当に一瞬しかできません。FETもそこそこ発熱します。

油断して遊びまくってたらFETが壊れました。
交換めんどくさいです。ついでにトロイダルコイルもでかいコアに巻き直そうと思います。そのうち商用電源入力もやります。

今日はここまで。では✋

2017年9月3日

DELL サーバー用電源 A500E-S0について (ピンアサインを少し解析)

ぜろちゃんだよ~ はい!

なんか練り物さんのブログを見てたら唐突にサーバー用の電源が欲しくなったので、ヤフオクで格安で落としました。ちょうど強い電源が欲しかったところだし。

それがこちらです!!!!!!!!!!
DELLのA500E-S0です。
 これ、なんと+12Vが41Aも取れるんです!
鯖電源いいっすねぇ~

で、さっそくピンアサインを調べることにしました。

ATX電源と同様に、サーバー用電源のいくらかあるピンのうち、特定のピン同士を短絡させないと12Vが出力されません。
また、サーバー用電源の場合は、どのピンどうしを接続したらよいかはメーカーや機種によって違うので、ググらないとまず分からないです。

...とまぁ、「ググればすぐ出てくるでしょw」感覚でググったんですが...
あれ?
なかなか出てこない...

これ、この電源のピンです。
太いピンが4本あって、+12Vが2本、GNDが2本という内訳です。
細いピンは縦4本、横に5本ずつで、20本あります。
つまり、(太いピン+細いピン)が(4+20)というピン配列になっています。

実はこれが非常に厄介でした。
ググって出てくるのは、(6+24)というピン配列のものばかり。
この電源と同じピン配列は全く出てこない。
これ、細いピンの数が4本違うだけで大混乱ですよ。

で、いろんなサイトをサーフィンしても全く分からず。
とりあえず、いろんなサイトを見て「これが片方かな~?」と思ったピンを固定し、もう片方をいろいろなピンとショートさせまくりました。

とりあえず12Vが出力されるピンアサインを発見!


しかぁぁぁぁぁし!!

負荷をつなぐとすぐに電圧が落ちてしまう...
という大問題が発生したので、さらにピンをうねうねしたら...

ついに発見しました!
最終的なピンアサインがこちら!

えっとまぁ、こんな感じです。
写真みて分からなかかった方は、コメントください。。。

これで数時間つぶれました。
なにはともあれ、やったねぜろちゃん!
これで練り物さんに次いで(?)新しいピンサインを発見(?)できたね(?)
(?が多くてすいません)


中身開けた時の写真です。ぎっしり詰まってますね。

疲れたのでねるお✋